父と情熱の白いドローン

父の誕生日、75歳になった。
年齢だけ聞くと立派なおじいちゃん、高齢者だ。
しかし本人は自分は若いと思い込み、若いような行動をするから厄介だ。

例えば父の運転技術だ。品川ナンバーのスカイラインで首都高を走らせていた思い出がいつまでも抜けず、ちょっとの隙間でも強引に入ろうとする。
しかし高齢者、判断の甘さが目立ってくるのだ。幸いにも事故は起こしていないが、ヒヤッとするシーンは昔より増えた気がする。以前はそんなこと全くなかったのに…。免許の返納なんてしないのだろう、あれはどうやったら話を持ち込めるのか…人様に迷惑をかけたらと思うとゾッとする。

しかしすごいところもある。探究心だ。新しいものにトライする気持ちは素晴らしくとても尊敬する。
新しいパソコンが欲しいと思えば、バラバラのものを購入して自分で組み立てる。家にある2台のパソコンとスマートスピーカー、自分のスマホを紐付けて何からでも操作ができるようにしたりする。そっち系の仕事についていたことはないので、完全な独学だ。しかも定年してからの…本当に尊敬だ。

そして更なる趣味は…ドローンだ。ドローンへの情熱は今までの父の凝り性歴からしても最強だ。
最初は小さいおもちゃみたいなドローンから始まったが、2台、3台と増えるとともに価格もあがり…今の愛用は約20万、スタイリッシュな白いボディの一台だ。毎日磨いている。

ドローンには使っていないiPhoneのカメラを紐づけて空中から撮影できるようになっている。それで家の近所の川原(通称 ヘリポート)からテイクオフ。空からの眺めを楽しんでいるのだ。老後の趣味としてはなかなか珍しいが、楽しそうなので何よりではある…母には申し訳ないが。

ある年父から、大阪のだんじり祭りに行かないかと誘われたことがある。興味があったのでとても嬉しかった。
岸和田に集合し、久しぶりに両親に再会した。…不思議といつも身軽な父の荷物が大きいのだ。そして母は不機嫌。
バスで祭りの会場についてその理由がわかった。
ドローンで祭りを撮ると言って持ち込んでいたのだ。

素人が許可なく祭りの空中を飛ばせるわけはない。無理に決まっているが、父は意気揚々とスタンバイしている。
ヘリポートで培った実力を試したくて仕方がないのだ。

いざ、テイクオフ!しようとした時に、実行委員のような人に止められた。何をしとるんや!と…。
私たちは正直…助かった、と思った。よく止めてくれた。
結局、少し偉い人が出てきて許可なく飛ばせませんよと言われた。父も粘ったが、国だか府だかに許可をとらないと大事になりますよと怒られ渋々ドローンをしまい出したのだった。
その後の大阪では父が不機嫌だったことは、言うまでもない。

ドローン熱はおさまることはなく、日々ヘリポートから飛ばしていて、近所の小学生から羨望の眼差しを受けているらしい。相手をしてくれて、ありがとう…
父の葬式では会場を上から撮ってやってくれと母に頼まれている。しかしピンピンしている父をみると…まだまだ練習の必要はなさそうだと感じている。